昨今、ベストセラーにキャッシュフロー会計の名を付した書籍が多い。ブームですらある。今回はキャッシュフロー会計に代表される会計ビッグバンを中小企業がどのように取り入れていくのが良いかを鳥瞰して提示したいと思います。会計ビッグバンの内容はディスクロージャー(企業内容の開示)を目的として次の制度などが盛り込まれています。
1. 買った資産を買った値段で決算書などに載せるのではなく、その時々の時価で載せようとする「時価主義会計」 2. 利益が出ていても金がないと倒産するので企業の状態を知るのはお金が有るか否かが重要だから、お金はどう生まれ何に使われ、いくら増減したのかが分かる「キャッシュフロー会計」 3. 税法と会計との取り扱いが違うので、正しい会計の処理をしたために今年の税金は高くなった分、来年自動的にその分の税金は安くなることを決算書に表して税金の影響(効果)が分かるようにする「税効果会計」 4. 企業の本体だけの経営成績では、グループ企業の実情は分からないのでグループ全体を合計する決算書をつくる「連結会計」
これらはニュースの折々に聞かれたことがある単語ばかりだろうと思います。 まず結論。会計ビッグバンの内容は中小企業にとっても必要だが流行に惑わされるなと言いたい。つまり大企業が上記の会計ビッグバンを強制的に適用を受けるのに対して、中小企業は強制適用を直接受けないのです。だから慌てない。しかし会計ビッグバンは世界の潮流で、日本的にはグローバルスタンダートという物差しですから、遅かれ早かれ中小企業にも浸透してくる。それならば善い所だけをまず取り入れて行くのが最適です。
ちょっと話が横に飛びますが、先ほど強制適用を直接受けないといいました。従って強制適用を間接的には受けるのです。先に挙げたグローバルスタンダート化もそれです。他に例えば端的には税法です。税法はご承知の通り強制法規ですから、中小企業も直接に影響されます。その税法が会計ビッグバンに対応して変化するからです。税法では大企業と中小企業は税率や交際費など所々で区別して課税を緩和したり強化するものの全般的には企業全体に対して課税します。その意味では税法を通じて善くも悪くも間接的に強い影響を受けながら、他の善い所を積極的に吸収する姿勢が必要です。
では会計ビッグバン(冒頭で挙げた以外にもある)の内、中小企業で積極的に取り入れるべき善いものは何でしょう。それは冒頭で掲げたものを、その順番で取り入れることです。1番の時価主義会計は昨年12月号で取り上げました。デリバティブなどの節税・租税回避の最先端で行われていることが会計を根幹から揺さぶっていることをお伝えしました。今回、全体のお話をしましたので次回は次に導入すべきキャッシュフロー会計についてお話しましょう。 <牧口 晴一> |
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