トヨタへの信頼が大きく揺らいでいる。 アメリカでのアクセルの不具合への対応。プリウスのブレーキの不具合についての欠陥を認めようとせず、フィーリングの問題といって、問題を小さく見せようとした。ようやく開いた社長会見でも、お客様第一といいながら明確な謝罪はなく、適切な対応を取ったとは言い難い。特にアメリカの消費者に対してはかえって不信感を増してしまったようだ。アメリカ政府や議会はついに堪忍袋の緒が切れたようで、社長を議会に呼びつける事態になってしまった。クレームやトラブルの対応が不明確でしかも遅く、小出しに対策を打ったために火に油を注いでしまったようだ。
 
結局、アメリカでも日本でも大量のリコールをせざるを得なくなってしまった。明らかに初動から対応を間違ったと言わざるを得ない。周りが御曹司の社長をかばおうとしたのか、頼りないので任せなかったのか知らないが、社長の力量が問われる事態だ。

 古くは三菱自動車がリコール隠しで大きく信頼を損ない、社長が辞任に追い込まれ、ブランドイメージに傷がつき、業績も悪化した。今だに十分回復しているとは言えない。
  雪印乳業は食品偽装問題の対応を誤り、会社が解散する事態となった。以後、不二家、パロマ等に危機対応を誤って社会的問題となった例は多い。

 サラリーマン時代にMG開発者の西順一郎先生からいろいろなことを学ばせていただいたが、中でも西先生にすすめられた一倉定の「社長学」シリーズから多くのことを学んだ。その中から「正しいクレーム処理とは」をご紹介する。
  宮仕え人種は、なんらかの落ち度やミスなどがあると、大きな処罰を恐れ社員が結束して隠す。部下は課長に、課長は部長に、というふうに上司には報告しない。組織的にもみ消しを行う。クレーム・トラブルは社長の耳には届かない。社長の耳に届くのは事件が大きくなって隠しきれなくなってからだ。後の祭である。
  社長の知らない間に多くの事故やクレームが闇から闇に葬られて、お客様に多くのご迷惑をおかけし、会社の信用を落としている。このような事態を未然に防ぐことこそ社長の重要な役割の一つである。

(1)クレーム処理はすべての業務に最優先して処理しなければならない。
(2)いかなる言い訳も絶対してはならない。「申し訳ありません、直ちに処置します」とだけ申し上げる。
(3)クレーム処理には時間と費用を絶対に惜しんではならない。
(4)クレーム事態の責任は絶対に追及しない。クレーム不報告の責任を厳重に追及する。 

  大切なのは一刻も早く正しい処置をとることだ。そのためにはクレームを即刻社長が知ることである。だからクレーム報告こそ最重要事である。もちろん、クレーム・トラブル処理は社長が率先して行わなければならない。 (一倉定の社長学:「新 社長の姿勢」より)

<佐藤 文弘>


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