
1.LLPの活用例から・・・
まずイメージをつかみましょう。例えばLLPは従業員の独立制度「のれん分け」にも使えます。つまり会社は既存の店舗(仮に1000万円の価値とします)を現物出資します。従業員は独立(退職)してその店に最低1円の出資をします。会社は引き続き経営アドバイス等の支援をし、元従業員は店の経営をします。稼いだ損益は、従来は出資金額に応じてしか分配が出来ませんでしたから、1000万円分の出資をした会社が、殆どを受け取りました。しかし会社と元従業員が組合(LLP)を作って、組合契約に損益を半々にする等、自由に決めることができます。これは相続税の節税にも使えます。
2.LLPとは
LLP(Limited Liability Partnership)とは「有限責任事業組合」です。会社はこの表現を借りれば「有限責任事業会社」となります。要は組合か会社かの違いで、組合は法人格がありません。
3.8月にスタートしている
新会社法の施行日は来年5月の見込みですが、LLPは今年の8月から始まっています。LLPは新会社法とは別の法律です。LLPは当初、『新会社法』の中のLLC(Limited Liability Company 合同会社)として検討されましたが、財務省が法人課税を譲らなかったことから『新会社法』から出て、LLP法を一足早く施行しました。
4.LLPの特長は、「いいとこ取り」
LLPは会社の持つ「有限責任」と、組合の持つ「パススルー課税」と新会社法でも認められる「内部自治の自由」と3つの“いいとこ取り“をしたものです。まず「有限責任」については民法上の組合は無限責任でしたが、これを改良しました。
次にパススルー課税は、組合の構成員に直接課税されるところから「構成員課税」とも呼ばれます。会社なら法人税や消費税が課税されますがLLPの損益は、LLP自体は課税されず構成員の個人や法人に配分され、個人なら他の所得と損益通算し、法人なら法人の損益に取り込めます。
さらに「内部自治」は、取締役や取締役会、株主総会などの設置義務がありません。全員の同意さえあれば自分達で自由に決められます。この極め付けが損益の分配について1で説明したように自由に決められることです。
5.LLPの限界
LLPの限界は、いわゆる「共同事業要件」で、お金だけ出して業務をしないことは認めないというものです。LLPのメリットを悪用される可能性があるため、投資組合のように出資だけを認めず、実際に組合の業務を行うことを強制しているのです。ですから上記1の例でも、会社は店舗を現物出資しただけでなく「経営指導など」の業務をしているのです。
実際に設立してみて、登記は簡単ですが「組合契約」を上手に作らないと揉め事をかかえますのでパートナーシップが出来る関係でないと大変です。
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<牧口 晴一>
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