
銀行の不良債権と問題のある大企業の整理が進んだ。斑模様ではあるものの景気は回復しつつあるようだ。今後は処理を先送りされてきた中小企業の整理が進むものと思われる。資金力があり速い成長を望む企業にとってM&A(合併・買収)手段を使って企業を拡大するチャンス到来といえる。またM&Aは後継者問題を解決する手段でもある。
M&Aの是非、成功の秘訣はここでは論じない。その際に生ずるシステム統合のあり方について述べる。
最近弊社にABC3社のシステム統合の依頼があった。3社とも同業で規模の大小があるものの、技術力はじめそれぞれ特徴があり、システム面でもしっかりした会社である。どう提案を行うかは腕の見せ所だが、それはさておいて原則論を考えてみる。
企業統合時のシステム統合の失敗例として身近なところではみずほ銀行の例が記憶に新しい。3行のシステム屋の面子の張り合いが原因と聞く。
2社が合併してシステム統合を行う場合、一般論として3つ方法がある。@全く新しいシステムを作るAA・B社のどちらか一つ良い方に統合するBA・B社の旧システムをそのまま動かして、データ等を共有橋渡しをするシステムを上に乗せる、といったやり方がある。
システムを統合する事自体はそんなに大変ではない。しかしシステムというのは会社の実務、事務や業務、仕事のやり方の集大成である。システムを変えるというのはそれらを全て変えるという事で、長年続けてきたやり方を変えるというのは実は大問題で、大変なリスクを伴う大仕事になる。
先ほどの@〜BのうちB案を取ると仕事の変更は最小限で済む。みずほもこの方法を取ったのだろうが上手くいかなかった。システムが複雑になって運用が大変だからだ。A案だと大きい方の会社のシステムに小さい会社の仕事のやり方を合わせ変更すればすむので合理化といえる。欠点は大きい方の会社のシステムが現在の水準からベストかどうか、むしろ旧システムをつぎはぎで使ってきた可能性が高いので今後の会社の発展の足枷となりかねないことだ。@案がシステム的にはベストである。会社の発展の為両社のやり方のよい所はこれを機会に取り入れ、悪いところは新しいやり方を採用する。思い切って新しい仕事のやり方を確立する方が新会社発展の礎となるのではないか。実行は大変だがベストウェイだ。
合併はその他にも人事全般、役員の処遇、事務所や工場の統廃合など社員の生活に関わることや軋轢を生む問題点が多いので、ついシステム統合がなおざりにされがちだが、これを手を抜くと合併の効果が出ないどころか致命傷になりかねないことを肝に命じていただきたい。<佐藤 文弘>
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