会社法を巡って、現在起こりつつある現象を、少々荒っぽいのですが思うままに書き連ねてみます。実は相互に複雑に絡み合い、まだ未定の項目も多いので多少荒っぽい位が丁度いいようです。

 さて、法案作成の佳境を迎えて、10月27日には要綱案を部会決定というところまで来て、来年早々の通常国会上程の見込みです。

 公にされている最近7月の部会資料の要綱案(第二次案)では数多くの方針が決定されました。今回はその内の「決算書の公告義務」からみてみましょう。
  第二次案では「株式会社は、その規模及び選択した機関設計の在り方に関わらず、決算の公告をしなければならないものとする。」とし、「罰則規定について、所要の見直しを図るものとする。」としています。
 昨年末に出された試案の5つの内、一番厳しい案が採用されました。ちなみに一番緩い案では、現在でも中小企業は決算書を公表する義務が有りながら殆どの会社がしていない、正に"赤信号、皆で渡れば怖くない"状態で守られていないのだから、いっそ実態に合わせて「義務付けを廃止」にしょうというものでした。罰則についてはどう見直されるのか現在のところ未定です。
 ちなみに、公告の方法は昨年の改正で、官報などに代えてホームページでも出来るようにはなりましたが、それぞれの方法には一長一短があります。

 決算書は公告したくないというのが偽らざる気持ちの経営者の取る手段は・・・と考えてみましょう。そこで第一の方法として有限会社への組織変更があります。しかし今度の改正では、有限会社はなくなり株式会社の中の一つの類型に入りますから今までは有限会社は決算書の公告義務はありませんでしたが、株式会社に変わることで公告しなければならなくなります。
 しかし、要綱案(第二案)では現存する有限会社については、「有限会社」の文字の使用を認め決算書公告をしなくてもいいというような既得権については「維持するための経過措置を設ける」と微妙な書かれ方をしています。とすれば決算書を公告したくない株式会社は改正法が施行される見込みの平成18年4月前までに有限会社に組織変更することも一案かもしれません。しかし、その「経過措置」が数年のものであるなら、いっそ次の策を考えるのも一計でしょう。

 改正法では有限会社を廃止する一方、新しい会社類型として「合同会社」なるものが用意されています。これは組合みたいな会社で、詳細は省くとしても決算公告をしなくてもいい会社なのです。
 したがって、対策の第二は、既存の株式会社から合同会社へ組織変更をすることとなります。合同会社はアメリカのLLC(有限責任会社)を模して考えられたものでアメリカではパススルー課税という恩典から多く利用されましたが日本では、その恩典が受けられるかは税法の改正を待たねばなりません。現状は、どちらかと言えば悲観的と判断していますが、公告から逃れたいとする気持ちには適するかもしれません。

<牧口 晴一>



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