Search

2008年04月02日

SATOのJAZZ入門 "You'd be so nice to come home to"

 ジャズを本格的に聴き始めたのは学生時代である。
家が裕福でなかったため、3畳一間の下宿暮らしであった。
アルバイトを一生懸命やって、小さなステレオセットを買った。
新宿のレコード店で初めてジャズのLPを買った。
クリフォード・ブラウンの"Study in Brown"であった。
以来30年、ジャズを聴くことが私の心の宝物であり続けている。

その中で最愛試聴盤を1枚というと、
アート・ペッパー "Meets The Rythm Section" となる。
1957年(昭和32年)の録音で、アート・ペッパーがアルトサックス、
当時のマイルス・デイビス・クァルテットのリズムセクションがちょうど
ロスアンゼルスに滞在しているのをつかまえて録音したものである。
アート・ペッパーは刑務所から出てきてロクに演奏もしていない状態で、
ぶっつけ本番だった。

アルバム全体の出来が良いのが、中でも"You'd be so nice to come home to"
がジャズ史上に輝く名演となった。
例によってその名演ぶりを筆にする力をもたないので、
実際に聴くことをお勧めする。
artpepper1.jpg

アート・ペッパーはその前半生を麻薬におぼれ、
刑務所に出たり入ったりの状態だったため、
名演奏をした時期は限られている。
1956年ごろに録音された数枚のLPが傑作として残っている。

長い療養生活の後、1974年に再起した。
作風が変わって、以前ほどリリシズムあふれる演奏ではなくなった。
苦難を乗り越えてたくましくなった演奏が聴ける'75年以降の作品も悪くはないが、
やはり'56年前後の演奏がベストであろう。

ここにアート・ペッパーの自伝がある。
("Straight Life"という自作の名曲からとったタイトル)
アートの波乱万丈、自滅型、自己破壊型人生にふれることができる。
ジャズの天才にはこういうタイプの生き方の人が結構多いように思える。
straightlife.jpg

ところで、JAZZにはこんな本があり、(「JAZZ詩大全」村岡勝男著1991年)
JAZZの名曲を日本語に訳しながらその曲の本質に迫ろうというものである。
"You'd be so nice to come home to"は一時期誤訳がまかり通ったが、
この本によって正しい訳を確認できた。
jazzlyrics.jpg

"You'd be so nice to come home to"は、正しく訳すと、
「君が待っていてくれるのなら、うちへ帰るのはさぞや楽しいだろうな」となる。
英語の仮定法過去が理解できないと、正しい解釈が容易でないそうだ。

さて、"You'd be so nice to come home to"といえば、
忘れてはならない名演名唱がもう一枚ある。
ヘレン・メリルwithクリフォード・ブラウンの中で歌われているそれが
名唱中の名唱といえる。
helenmerril.jpg

若き天才、クリフォード・ブラウンがトランペット、
若き天才、クィンシー・ジョウンズがアレンジを担当している。
1953年(昭和28年)の録音、なんと私の生まれた年である!
ヘレン・メリルは弱冠20歳、クリフォード・ブラウン23歳の時であった。
このLPもまた歴史に残る大名盤なので一聴に値する。
寒い夜、暖炉の前に座って聞くと心にしみわたること、間違いない。

trackbacks

trackbackURL:

comments

comment form

(SATOのblog にはじめてコメントされる場合、不適切なコメントを防止するため、掲載前に管理者が内容を確認しています。適切なコメントと判断した場合コメントは直ちに表示されますので、再度コメントを投稿する必要はありません。)

comment form